2017年3月19日 聖書:ヨハネによる福音書13章1~11節 「立派な弟子の足を洗う?」 美濃部信牧師

 キリストが十字架にかかる前の晩のこと。イエス様も弟子たちもキリストの十字架のこと知っており、切迫した思いでその時を過ごしていました。その時、イエス様はこの世を去ることを自覚し弟子たちを「この上なく愛し抜かれた」とあります。この弟子たちへの愛を貫くことは、彼らのために苦しみを担うということでした。というのは、最期の別れの食事の席で弟子たちの心は純粋な想いになっていたわけではなかったのです。例えばユダはすでに裏切る想いを固めており、イエス様はそのことを既にご存じでした。つまり弟子たちをこの上なく愛し抜かれたのは、彼らの心が純粋だったからではありません。裏切りを知りながら、なおも愛された。だから愛し抜かれたと書いているのです。私たちもみんな純粋だからイエス様が愛されるのではないのです。何か立派な人たちが集まっているから教会は成り立っているなどということはありません。
イエス様は、問題を含んだ弟子たちのことを神様から任されていました。つまり問題を抱えた弟子たちを捨て去ることもできたのです。しかしイエス様はそうせず弟子たちの足を洗い始めました。それに対してペトロは「主よ、あなたがわたしの足を洗ってくださるのですか。」と答えました。彼は恥ずかしかったのです。足は人間の一番汚れる部分。その自分が見られたくない場所を見られることをペトロは恥じたのです。
イエス様はそれに対して「もしわたしがあなたを洗わないなら、あなたはわたしと何のかかわりもないことになる。」と答えられた。キリストとペトロの関係、それはこの一点にあると言われたのです。つまりキリストがペトロの足を洗い続ける。これが私とあなたのつながりだと言われたのです。ペトロが熱心にイエス様を慕っているとか、熱心にイエス様を愛しているとか、そういうことがイエス様とペトロとのつながりではないのです。そうでは無くて、イエス・キリストがペトロの汚れた足を洗って下さる、これがイエス・キリストとペトロとの唯一のつながりです。
私たちもイエス・キリストとつながっています。しかしそれは私たちが何かイエス・キリストに対する熱心や神様に対する情熱があるからつながっているのではないのです。他の人よりもきれいだとか、立派だとかそんなことはひとつもありません。私たちの生活は道を歩いて行くようなものです。そして残念なことに、歩けば歩くほど足は汚れます。誰かを傷つけ、誰かを背き、誰かを裏切り、幾度も神の手を振り払い、私たちの足は汚れきっています。しかし私たちには足を洗っていて下さる方がいるのです。つまり私たちには十字架の救い主がいて下さる。
キリスト者は、自分でこういう人間になろうと決心して変わる人間ではありません。私たちは何回も挫折を繰り返してきました。キリストに足を洗って頂きながら、変えられていく人間です。自分が変わるのではありません。私たちの前にひざまずいて下さる救い主がおられるから、こんな私たちでも少しずつ変えて頂くのです。それが私たちの信仰の歩みです。

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