2022年5月8日 聖書:コリントの信徒への手紙Ⅱ4章16~18節「見えないもの」豊田護兄

  見えないものと言われたら、何を考えますか。「思いやり」「優しさ」「悲しさ」「信じる」「愛」「恋」といろいろな言葉を思い浮かべます。これら全ての言葉の下には「心」をつけ
ることができます。言い換えると、見えないものは、「心」に集約されるのかもしれません。みなさんがよくご存じの「星の王子さま」という有名なお話は、この「心」がテーマのお話です。このお話の中で、キツネが王子さまに「本当に大切なものは目に見えない」と語ります。日本の小説では、大山淳子さんの「あずかりやさん」という小説がこのテーマをあつかっています。大山さんは、テレビドラマの「猫弁」で有名なかたです。主人公は、目の見えない青年で、彼が営む1日100円でなんでも預かるお店の話です。心が疲れた方にぜひお勧めします。

 40年以上も昔、私は盲学校に勤めました。そこでさまざまな生徒たちから多くの事を学びました。人には見えている風景も世界も違い、見えている人には見えない世界があり、逆に大切なものが見える人がいることを学びました。そして教師として大切なことは、教える技術ではなく、ともに寄り添うことだと生徒たちから教えてもらいました。

 「信じる」ということは、分かるということとは全くちがいます。「分かる」や「理解する」というのは見える世界のことで、「信じる」は見えない世界にあるものです。「見えないものは大切だ」とは特別なことではありません。私たちはつい見えるものに心を奪われ、大切なものをみうしなってしまいます。もう一度本当に大切なものについて考えてみましょう。「魂」と「心」が見えてきます。

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